年金制度について何かとネガティブなイメージがありませんか?
特に20〜30代の若い世代の方から「年金はもらえないかも」「年金制度って崩壊するでしょう?」という意見を伺う事があります。
給付開始の年齢や給付金の金額は現時点の制度とは大きく変わる可能性が高いです。
その時々の平均寿命や人口分布により制度は改定され形を変えていくと考えています。
実際に2022年4月に年金法は改正されます。
改正後はどのような内容になるのか?
私たちの生活にどう影響するのか?
ネガティブなイメージを持つ前に正しく年金制度を理解しましょう!
年金制度とは
出典:photoAC
年金制度は「世代を超えて社会全体で備える仕組み」です。
日本に住む原則20才〜60才までの働ける世代の人たち全員が加入し、その保険料で高齢者や保障が必要な人たちに年金を給付する仕組みです。
15才や18才で就職する人はその時点で加入します。
加入年齢の下限は設定されていません。
一般的には高齢者向けの「老後資金」というイメージがあり、健康な若い世代にとっては身近な問題としてとらえにくい側面があります。
しかし年金は高齢者に給付されるだけのものではありません。
怪我や病気により障害者として認定された方や万が一の死亡時に遺族に支給されるお金も年金です。
公的年金の支給開始年齢
原則10年以上納付し年齢が65才以上となれば納付期間に応じた基礎年金の給付されます。
年金制度の構造
年金制度は3階建ての構造です。
3階(企業や個人が任意で加入) | iDeCoや企業型確定拠出年金 |
2階(会社員・公務員が加入) | 国民年金基金や厚生年金 |
1階(日本在住の原則20才〜60才までの人全て) | 国民年金(基礎年金) |
被保険者の種別
年金の加入はライフスタイルや働き方によって変わります。
種別 | 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 |
職業 | 自営業者・学生・無職 | 会社員・公務員 | 専業主婦(夫) |
加入制度 | 国民年金 | 国民年金・厚生年金 | 国民年金 |
月額保険料
第1号被保険者:定額 (2021年度時点で16,610円)
第2号被保険者:月給の18.3% (就職から退職まで負担。半額は会社負担)
第3号被保険者:負担なし(第2号被保険者全体で負担)
給付開始時期と給付金額
給付開始時期
2021年現在、国民年金(基礎年金)の支給開始年齢は65才です。
あくまでも納付した期間に応じて給付額が決定します。
引退後給付金額例
第1号被保険者例
原則20才から60才の40年の全ての間、国民年金の保険料を納付すると月額約6.5万円(満額)を受給できます。
第2号被保険者例
平均月額14.8万円(出典:厚生労働省 平成30年年度末データ)
第3号被保険者例
月額約6.5万円(満額)
iDeCoとは
iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金の愛称です。
簡単に言うと運用などの方法で自分で作る年金です。
掛金が全額所得控除され、所得税と住民税が軽減がされるのが大きなメリットの1つです。
またiDeCoで資産運用をした場合掛金や利益が一定額まで非課税となります。
2021年時点iDeCoの加入条件は日本在住者の20才〜60才の方です。
受け取りは原則60才からです。
過去記事でまとめていますので宜しければご一読ください。
企業型確定拠出年金
企業型確定拠出年金は会社が従業員の老後の資金形成のために用意する制度です。
企業型確定拠出年金の掛金は会社が拠出します。加入者が拠出する掛金は全額が所得控除の対象になるため、税制優遇を受けながら老後資金の準備ができます。
2022年4月年金法改正
年金法改正に注目していきましょう。
ポイントは以下の4つです。
①「厚生年金・健康保険」対象者の拡大 。
②働きながらの年金受給ルール改正。
③繰り下げ受給が75歳までに改正
④iDeCoの加入上限年齢の改正
①「厚生年金・健康保険」対象者の拡大
パート・アルバイトの社会保険の加入の条件が拡大されます。(この改正は2022年の10月から施行されます。)
対象 | 要件 | 平成28年10月~(現行) | 令和4年10月~(改正) | 令和6年10月~(改正) |
事業所 | 事業所の規模 | 常時500人超 | 常時100人超 | 常時50人超 |
短時間労働者 | 労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 | 変更なし | 変更なし |
賃金 | 月額88,000円以上 | 変更なし | 変更なし | |
勤務期間 | 継続して1年以上使用される見込み | 継続して2か月を超えて使用される見込み | 継続して2か月を超えて使用される見込み | |
適用除外 | 学生ではないこと | 変更なし | 変更なし |
出典:厚生労働省
②働きながらの年金受給ルール改正
60~65才の会社員・公務員に関するルール
現在はシニア人材の活用で60才以降も働く会社員や公務員がたくさんいます。
年金が受給できるのは原則65才を過ぎてからですが、一部条件を満たした人は60~65才の間も受給できる特別支給の老齢厚生年金があります。
ところが特別支給の老齢厚生年金は収入が多いと減額されてしまいました。
今回の改正後も収入により減額にはなるのですが上限の金額が大きく変わりました。
年金受給ルール
改正前:「年金 + 給料」が月28万円以上のとき減額 改正後:「年金 + 給料」が月47万円以上のとき減額
対象となる年齢
男性:1961年4月1日以前生まれ 女性:1966年4月1日以前生まれ
改正のおかげで働く意欲と能力のあるシニア人材が改正前より長く働くことができます。
65~70才の会社員・公務員に関するルール
現在65~70才の会社員・公務員は厚生年金保険料を払いながら厚生年金を受け取っています。
厚生年金の受給額は支払った額に応じて金額が変わります。
今回の改正では年金に反映される年齢の変更が改正されました。
改正前:65~70才の間に仕事を辞めた時点で反映 改正後:66~69才の間に随時
結論
改正後は保険料を多く納めるほど翌年からの給付金が増加します。
60才以上の方が働くメリットが強くなりました。
③繰り下げ受給が75才までに改正
今までの上限は5年繰下げでしたが改正後は最大10年遅らせることができます。
受給年齢を繰下げ
1カ月受け取りを遅らせるごとに0.7%ずつ増えます。 5年(60カ月)遅らせると42%増えます。 10年(120カ月)遅らせるとの85%増えます
④iDeCoの加入上限年齢の改正
この改正により現行の60才から原則65才になるまで加入が認められます。
ただしiDeCoの老齢給付金を受給した方公的年金を65才前に繰上げ受給した方は除外。
まとめ
年金制度の基本についてシンプルにまとめてみました。
2022年4月の改正は現役働き世代の方々よりもパート・アルバイトの方々の社会保険加入の条件の拡大やシニア人材の働き方に大きく影響します。
扶養の範囲内で働いていた主婦(夫)の方や引退を考えていたシニアの方が今後、積極的に社会で活躍する事を国が公的に後押ししている様子が見えてきます。
改正によって働き方や職場環境がどう変わっていくのか今後も注視していきたいです。